その4 CSタームについて
特許調査の出来栄えの合格点が70点であるとしたら、70点以上の調査を行っていれば事業活動に影響があるような問題は起こりにくく、問題が発生したとしても致命傷に至ることは少ないと思います。基本プロセスを、手を抜くことなく実施することで達成できる70点の特許調査を、80点に、さらに90点にレベルアップさせるためには、基本プロセスのまわりに枝葉として存在する些細な工夫を一つ一つ積み上げる必要があります。
この講座では、特許調査の精度を高めるための細かなテクニックを、一つずつ取り上げながら、実際の事例を交えて解説していきます。
4.CSタームについて
一般財団法人ソフトウェア情報センター(略称:SOFTIC)の附属機関であるソフトウェア特許情報センターでは、特許庁で行われるソフトウェア関連発明の出願の審査に係る先行技術調査に用いるコンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)の構築にあたり、ソフトウェア関連技術(「ビジネス、ゲーム関連分野」を含む。)に関する非特許文献(コンピュータソフトウェアマニュアル、単行本、雑誌、学会論文誌、企業技報等)を収集し、収集した文献について特別の検索キー(CSターム)を付与し、フリーワードを抽出し、抄録を作成し、これらを電子化情報としてCSDB用の文献情報を作成しているそうです。
コンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)はソフトウエア関連発明の審査の運用指針が改定されたことにより、1997年から構築が開始されています。非特許文献に止まらず、一部の特許出願についてもCSタームが付与されており、特許データベースで検索することが可能になっています。
J-PlatPatにおいては、2018年3月の大幅改変の時に、「特許・実用新案テキスト検索」、「特許・実用新案分類検索」および、「コンピュータソフトウェアデータベース(CSDB)検索」の統合が行われたので、現在では「特許・実用新案検索」のページから検索を行うことができます。また、「特許・実用新案分類照会(PMGS)」のページから『9A001』のFタームを照会することで、Fタームと同様に体系づけされた分類コードの詳細を確認することができます。図10には、9A001で展開されている観点項目を示しました。

図10 9A001の細分化項目
また、「特許・実用新案分類照会(PMGS)」のページの「Fターム簡易表示」のリンクから参照できるテーマグループ選択画面にて「テーマグループ:9A」を選択すると、図11に示したように、『9A001』以外のテーマコードを参照することができます。

図11 CSタームに関するテーマ名称
しかし、『9A001』以外のテーマコードについては、テーマの設定はされているものの、J-PlatPatで検索しても1件もヒットしません。解析停止となっているテーマもあるようですが、解析停止の有無にかかわらず、『9A001』以外のテーマコードでは特許情報はヒットしません。つまり、『9A001』以外のテーマについては非特許文献に対してのみCSタームが付与されていると推測されます。
ちなみに、J-PlatPatの「特許・実用新案検索」のページでは、デフォルトでは文献種別として「国内文献」と「外国文献」のチェックボックスが選択されていますが、『非特許文献』をチェックして検索対象に加えた状態でCSターム指定検索を行うと。非特許文献もヒットします。『9A001』以外のテーマについても「非特許文献」はヒットします。
以上のようなCSタームの運用状況を垣間見ると、クリアランス調査や技術テーマ調査においては使用すべき理由が見当たりませんが、コンピュータソフトウェア系のテーマの場合に限り、無効資料調査や先行技術調査では利用する余地はあるのかと思います。
しかし、ヒットする文献の発行日などを参酌すると、過去から最新分までを、きっちりと収録されているとは思えないので、参考程度の利用に止めるべきかと思います。
今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その5 ビジネス関連発明とIoTに関連する特許分類について」の説明をします。
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