その1 関連特許の一覧表を作成する

特許調査の結果を、見やすく、分かりやすく、一目で把握しやすくするツールとしてパテントマップがあります。特許調査により抽出された関連特許群の全体像を把握するとともに、個々の特許の中身を示して「見える化」するために、パテントマップを作成し、さらに、作成したパテントマップを活用して、知財活動や研究開発活動に生かしていくことは事業の発展に役立ちます。

この講座では、抽出した特許のポイントを要約するとともに、技術分類を設定しながら層別体系化した関連特許一覧表の作成から始まり、全体像を把握するための技術系統分布図や、技術のトレンドを把握するための時系列流れ図を作成するプロセスについて解説します。さらに、パテントマップを活用して開発テーマを模索したり、特許ポートフォリオ(特許網)を構築する事例についても紹介します。

1.関連特許の一覧表を作成する

特許検索により得られる母集合をスクリーニングすることで、ノイズが除かれた関連特許群が抽出されます。まずは、こうして抽出された関連特許群の一覧表を作成します。一般的にはExcelで一覧表を作成すると思います。

有料の特許データベースをお使いの場合には、多様な項目についてCSV形式のデータや、代表図付きのエクセル形式のデータなどでダウンロードすることができると思います。無料のデータベースであるJ-PlatPatでもCSVデータのダウンロードは可能ですが、別途ユーザー登録をする必要があります。また、無料のJ-PlatPatでは、ダウンロードできる項目も番号、日付、発明の名称、出願人などの書誌的事項の他には、要約文のテキストと文献URLまでであり、【請求項】のテキストや、代表図の画像データ、審査経過の情報についてはダウンロードできません。

そして、抽出した公報全文のpdfデータについてもダウンロードして、エクセル一覧表の公報番号にハイパーリンクを埋め込めば、必要に応じてpdf公報の全ページを参照することが可能になります。無料のJ-PlatPatでは、一度の操作でダウンロードできる特許公報の件数は5件までなので、J-PlatPatのCSVから一覧表を作成する際には「文献URL」のデータを活用し、特許公報の詳細を確認したいときには「文献URL」からJ-PlatPatの文献詳細表示を確認する方が良いかもしれません。

中級編の検索式立案事例で紹介した「ダブルクリップ」の特許調査により抽出された関連特許の一覧表の作成例を図1に示しました。
「各種番号/日付」「出願人」「発明の名称」「代表図」「要約」「請求項」のデータ(セルの色が水色の項目)はダウンロードしたデータですが、「関連度/A:高、B:中、C:低」「課題/課題分類」「解決手段/部位分類」「生死/◎:権利存続中、○:公開中、×:消滅」のデータ(セルの色が緑色の項目)は独自に作成し入力した項目になります。

図1 関連特許一覧表の例

「関連度/A:高、B:中、C:低」については、調査テーマに応じて、抽出された特許の関連度や影響度をランク分けして表示しています。ランク分けをする際には、各ランクに属する定義を明確にして記録しておくと良いと思います。

「課題/課題分類」と「解決手段/部位分類」の項目は特許の内容を把握するために役立つデータです。各特許の「課題」と「解決手段」について150字から300字程度の一言で表す要約文を作成します。各特許公報の内容が「どんな課題に取り組み、どのように解決しているのか」のポイントを文章にします。そして、課題と解決手段のそれぞれをグルーピングして分類体系項目を構築して「課題分類」と「部位分類」に記入します。分類体系項目の構築については後述します。

さらに、「生死/◎:権利存続中、○:公開中、×:消滅」については、審査経過のステータス情報を参照し、「審査が終わり特許権が存続中であるもの→◎」「権利化は図られていないが、今後、権利化される可能性が残されているもの→○」「権利期間満了、拒絶査定、取り下げなどの理由で消滅しているもの→×」を区分けして表記しています。

ここで説明した「関連度」「課題分類」「部位分類」「生死」の項目については、Excelのフィルター機能を活用することで、一覧表の中から、「関連度がAで、特定の課題について、生存している特許」を指定して抽出することが可能になります。このように独自に構築し付与する項目を、調査テーマや調査の目的に応じて適切に設定し入力することで、抽出した特許群を、研究開発プロセスのいろいろな場面で活用することができると思います。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その2 技術層別して技術体系化項目を検討する」について解説していきます。

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