その6 J-PlatPatを使った特許調査事例(前編)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)より、無料で特許情報の検索ができる「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」が提供されています。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

1999年から「特許電子図書館(IPDL)」として始まった無料の特許データベースは、2015年には「J-PlatPat」として生まれ変わり、さらに、2019年5月には、大きく機能改善がなされて検索操作のインタフェースも大きく変更されました。

この講座では、特許調査の初歩の段階で行われる簡単な特許検索について、無料で手軽に使える「J-PlatPat」の実際の操作事例を紹介しながら解説していきます。

 

6.J-PlatPatを使った特許調査事例(前編)

特許検索講座初級編の締めくくりとして、J-PlatPatを使って先行技術調査を実施した特許調査事例を紹介します。「レバー回動収納式のダブルクリップ」に関する発明アイデアを特許出願するにあたり、類似する先行技術文献を抽出することを目的とした特許調査です。特許調査の内容を図33に示しました。

図33 調査内容の説明

(1)調査テーマを検索概念で表現する

まずは、調査テーマを把握して、検索概念の組み合わせで表現します。抽出対象技術として説明された内容が記載されている特許公報を引っ張り出すために、どのような概念を用い、その概念の組み合わせをどうするのかをベン図で表します。図34は、概念の組み合わせを表したベン図です。

図34 概念の組み合わせを表したベン図

今回の調査テーマで用いる検索概念は「ダブルクリップ」「レバー」「回動」「収納」の4つを選択しました。そして、選択した概念の組み合わせをベン図に表すとともに、抽出対象とする公報は、この4つの概念をすべて含む、黄緑色の部分に含まれるものとしました。参考までに、ベン図で表される各集合の重なりの部分にどのような構造のダブルクリップが含まれるのかを考えてみました。青色の部分には回動収納以外の方法でレバーを収納するものが含まれます。また、黄色の部分には、収納目的ではないが、レバーが回動するものが含まれます。

このように、周辺にはどのような構造のダブルクリップが存在するのかを想定しながら、今回の調査で欲しい部分はどこなのかを明確にイメージしておくことは重要です。検索式の検討段階のみならず、スクリーニング段階でも要不要の判断の役に立つものと思われます。

 

(2)予備検索

調査テーマを検索概念の組み合わせで表して検索方針が固まったら、予備検索を実施します。予備検索では、今回の調査テーマに関連する特許分類や、類義語、同義語などのキーワードのバリエーションを確認するための素材集めをします。

実際に実行した手順を順番に説明します。まずは、4つの各検索概念に相当するキーワードを指定して、キーワード検索を実施します。(図35)

図35 キーワード入力画面

具体的には、1行目は要約/抄録中に「ダブルクリップ」を含み、2行目は全文中に「レバー」を含み、3行目は全文中に「回動もしくは回転」を含み、4行目は全文中に「収納」のキーワードを含むものを指定しました。各行間の検索条件はAND検索です。その結果、ヒット件数は9件でした。

検索結果を下へとさらにスクロールしていくと、ヒットした9件の一覧表示を見ることができます。(図36)

図36 ヒット一覧表示画面

目次一覧の表示項目は、文献番号、出願番号、出願日、公知日、発明の名称、出願人/権利者、FIに加えて、一番右には各種機能へのリンクボタンが表示されています。この目次の名称と出願人名を見ながら、詳細な内容を確認したい公報があれば、文献番号の文字リンクをクリックすると新しいタブに文献内容が詳細表示されます。今回の事例では9件の公報の内容を順番に確認し、調査目的に関連する内容の公報を抽出することにしました。

1件ずつスクリーニングを進めていくと、2件目(図37)と、4件目(図38)と、7件目(図39)の公報に、関連する内容が記載されていると思われました。

 

図37 スクリーニングの画面(2件目)

図38 スクリーニングの画面(4件目)

図39 スクリーニングの画面(7件目)

2件目と4件目の公報は、2000年以降に公開された公開公報であり、書誌情報の欄にFI分類コードとともに、Fターム分類コードも記載されていますが、7件目の公報は平成7年(1995年)に公開されており、書誌情報の欄にはFターム分類コードは記載されていません。しかし、文献表示画面の右上に表示される「経過情報」のボタンをクリックすると、「経過情報照会」の画面が表示され、さらに、その画面の「出願情報」のタブをクリックすると、図39の左下の「経過情報表示画面」を確認できます。この経過情報表示画面では「テーマコード記事」「Fターム記事」の部分にFターム分類コードが記載されています。

各抽出公報の「経過情報」を参照し、FIとFタームを確認すると、公報発行時に付与された特許分類とともに、その後に改廃が行われた最新の特許分類を確認することができます。こうして確認した、抽出公報に付与されているFIとFタームのコード記号を、図40のように整理してみました。

 

図40 抽出公報のFIとFターム

次に、付与された分類コードの内容を確認して、本検索に使うことができそうな特許分類か否かを検討します。図41には、FIについて分類の内容を確認して採用/不採用の検討を行った様子を示しました。

 

図41 FIの採否確認

抽出した3件に共通して付与されていた「B42F1/02B」は、ダブルクリップに関する特許分類であり、採用することに決めました。ただし、「B42F1/02B」が有する概念は「ダブルクリップ」の概念のみであり、「レバー、回動、収納」の概念は含んでいないことも明確にしておきます。(含まれていない概念については、キーワードを掛け合わせるなどしないと、欲しい回答集合は得られないということです。)

さらに、図42には、Fタームについて分類の内容を確認して採用/不採用の検討を行った様子を示しました。

図42 Fタームの採否確認

抽出した3件に付与されていた3つのFタームのうち、「2C017DA01」は検索に使いたい概念とは関係しないので採用を見送りました。残りの2つについてはダブルクリップに関連する内容であり、採用することにしました。「2C017BA02」については、「ダブルクリップ」と「レバー」と「回動」の概念を含んでおり、特に関連性が高いFタームであると思われます。

予備検索の工程では、特許分類の選定とともに、関連するキーワードの抽出も行います。具体的には、検索に用いる概念を表す、類義語、同義語などのキーワードのバリエーションを拾い上げる作業を行います。予備検索で抽出した公報のほかにも、関連性が高いFタームである「2C017BA02」が付与された公報の内容を確認し、各検索概念に相当するキーワード表現を拾い上げました。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その7 J-PlatPatを使った特許調査事例(後編)」について解説します。