その2 特許分類の見方、探し方のコツ(前編)

検索式立案プロセスを学んだ後には、できるだけ数多くの案件に取り組み、学んだ手法を自分のものにしていく必要がありますが、同時に、それぞれの案件に取り組むことで得られた新たな知見を蓄積していくことも重要です。
特に、「こんなことをすると調査モレが起こる」とか、「こうすると調査モレを防げる」とか、「こんな工夫をすれば効率的に欲しい特許を検索できる」といったノウハウを多く知ることで、特許調査の精度をさらに高めることができます。

この講座では、検索実務や検索事例研究活動により得られたいろいろなノウハウについて解説するとともに、効果的な学びの機会となる検索事例研究の活動の進め方を紹介します。

 

2.特許分類の見方、探し方のコツ

特許調査の基本は関連する特許分類を特定し、特許分類指定検索を実施することです。特許分類検索を実施することで、モレを減らすとともに、ノイズを少なくした特許調査を実現できます。

今回と次回の2回に分けて、特許分類を特定する際に参考となるノウハウや注意点について説明します。

 

(1)特許分類表の前後を俯瞰する

特許分類を特定する時には、特許分類コードの内容を確認するために分類表を参照すると思います。よくあるパターンとして、具体的には、予備検索で把握した適合公報に付与されているFIやFタームやIPCなどの特許分類コードを確認し、その分類コードの内容を確認して、検索に用いるべき分類なのか、否かの判断をすると思います。

分類表を参照する際には、内容確認したい特許分類コードの上位の分類や、下位の分類の確認だけにとどまらず、前後にある周辺の特許分類についても俯瞰することをお勧めします。

具体的な例で説明します。ゴルフクラブの打撃時に生ずる不快なビビリ振動を緩和するために、繊維強化樹脂製のシャフトを採用する技術について調査を実施した事例を、図4に示しました。

図4 ゴルフクラブのFI分類

予備検索で把握した適合公報には「A63B53/00」というFI分類コードが記載されていました。「A63B53/00」のFI分類表を参照すると、「A63B53/00」はゴルフクラブのFIであることが確認され、検索に使うことができると判断されると思います。このときに、「A63B53/00」の内容確認にとどまらず、前後の分類についても確認すると、ゴルフクラブ以外にも、テニスラケット、野球のバットなどの打球具に関する特許分類が存在することが確認できます。

この調査の目的が、打撃時の不快な振動を緩和する技術を模索する技術テーマ調査であった時には、バットやラケットの打撃時の振動を緩和する技術が記載された特許公報も参考になるのではないでしょうか? 前後にある周辺の特許分類を俯瞰することで、打球系の打撃具の振動抑制技術に関する特許分類を検索対象に追加することが可能になります。

 

(2)分類ランキング集計で特許分類を特定する

特許分類を特定するテクニックの一つに「分類ランキング集計」があります。調査テーマに合致すると思われる検索集合に含まれる特許公報に付与されている特許分類をランキング集計したものです。

上位にランキングされた特許分類は、付与されている頻度が高いということから、調査テーマに関連する可能性が高いと判断できます。そのため、ランキング集計対象となる検索集合が適切でないと、ランキング結果が良くならないので注意が必要です。図5には骨固定用インプラントの特許調査を実施した際に検討したランキング集計の結果を示しました。

図5 分類ランキング集計表の例

具体的には、「骨andインプラント」により得られた検索集合と、「骨andねじ」により得られた検索集合のランキング集計の結果を比較したものです。適合公報となる引用文献に付与されていたFIとFタームのランキング順位を比較してみると、「骨andねじ」により得られた検索集合において、引用文献に付与された特許分類が上位にランキングされていました。「骨andインプラント」と骨固定外科手術道具全般を含む検索集合よりも、「骨andねじ」のように具体的な固定構造にフォーカスした検索集合にすることで、調査で使用すべき適切な特許分類を特定できます。

図5で紹介した分類ランキングの事例では、有料の特許データベースを使って、FIとFタームのそれぞれのランキング集計を行っていますが、無料のJ-PlatPatにおいては、FIについてのみ分類コードランキングを得ることができます。また、FI分類集計について、図5に紹介した事例では、サブグループ単位(/の後ろのコードまで)のコードにて集計されていますが、J-PlatPatにおいては、メイングループ単位(/の前のコードまで)の集計になっています。

 

(3)FIハンドブックを参照する

分類コードの内容を確認する際に、説明項目を読んで内容を理解できれば問題ありませんが、初めて経験する分野のFIの説明項目を読んだだけでは、いまいち理解できないケースもあると思います。そんな時には、「特許・実用新案分類照会(PMGS)」のハンドブック参照機能を活用することをお勧めします。

図6には、ダブルクリップに関するFIである、「B42F1/02B」の分類コードの内容を確認した際の画面を示しました。

図6 FIの内容とハンドブックを参照する

「B42F1/02B」の分類内容は「ダブルクリップ;山形クリップ」と記載され、このFIの内容を理解することは容易ですが、分類内容の説明の中には、その説明文を読んでも内容の理解が難しいケースもあると思います。そんなときには、説明文の右にある『ハンドブック』のアイコンをクリックしてみてください。図6の右上には、ハンドブックをクリックして表示される画面を示しました。

ハンドブックの表示画面を見ると、説明に加えて、『補足説明』や『関連分野』について表示されています。この『補足説明』や『関連分野』の記載がされていると、そのFI分類の内容の理解に役立ちます。また、今回のダブルクリップのFI分類である「B42F1/02B」の下位階層には「B42F1/02C:他の機能を付加したもの」といったFIが存在しますが、『補足説明』の欄には「他の機能」の例示として、「フック付、押しピン付、見出し付」といった記載がなされており、「他の機能」の内容を理解するのに役立ちます。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その3 特許分類の見方、探し方のコツ(後編)」について解説していきます。